お寺に行くと、いろいろな仏様に会うことができます。
目に見えない神様の存在を信じて参拝する神社と比べて対照的だと感じるのは、やはり仏様が仏像となって、私たちの目の前に、しっかりとそのお姿を見せてくれることだと思います。
神社仏閣へお参りすると、自分の中に、いろいろな感情や学びが生まれます。
神社が人生の豊かさに気づかせてくれる場所であれば、お寺は人生を豊かに暮らすための教えを授けてくれる場所。
「あん・はな」では、そう考えています。
そんな教えを授けてくれる仏様の姿をした仏像の表情は様々で、お参りする私たちの心も相まって、私たちにその時にピッタリの教えを授けてくれます。その教えが、私たちが望む「救い」なのかもしれません。
豊かな心で、いつも私たちを救ってくださる仏様たちですが、実は仏様の中にも階級があります。
その頂点にいらっしゃるのは「如来」(にょらい)と呼ばれるグループ(如来部)の仏様です。
如来様は、真理を得て、悟りを開いた存在として、私たちの前に姿を現してくれているのです。
どんな如来様がいらっしゃるの?
階級の一番上位にいらっしゃる如来様。
会社でいえば社長、学校でいえば校長(理事長?)みたいなものでしょうか。
しかし、社長や校長や理事長とは違うのは、社長は会社に一人、校長は学校に一人ですが、如来様は複数いらっしゃいます。
「じゃあ、簡単に如来になれるんじゃないの?」
と、思われるかもしれませんが、そんなことはありません。悟りを開くということは難しいことであり、悟りを開くためには様々な努力が必要であることを、私たちは如来様から教わるのです。
では、どのような如来様がいらっしゃるのでしょう。
釈迦如来(しゃかにょらい)
元々は、シャカ族の王子・ゴータマシッダールタ。その悟りを開いた姿が釈迦如来といわれています。
阿弥陀如来(あみだにょらい)
西にある、あの世の世界「極楽浄土」から来て、人々を極楽浄土へと導いてくれるといわれています。
薬師如来(やくしにょらい)
東にある浄瑠璃世界にいて、人々の病を治したり、癒したりを担当する仏様。
大日如来(だいにちにょらい)
「大日」とは太陽を意味し、密教における最高位の仏様。大日如来は「金剛界(こんごうかい)」と「胎蔵界(たいぞうかい)」の、それぞれいるとされています。
毘盧遮那如来(びるしゃなにょらい)
毘盧遮那如来の代表ともいえる東大寺の「奈良の大仏さま」である廬舎那仏は、 毘盧遮那如来 。
他にも、如来と名の付く仏様はいらっしゃいます。
人々が、この世でいろいろな教えや救いを求める中で悟りを開き、如来様が誕生する。そして、いろいろなお姿で、この世に姿を現してくれているのです。
如来様をもっと知るための共通点!
仏様のお姿をした仏像からは、いろいろな学びが得られます。
そのためにも、如来様の特徴・共通点を知っておくと、さらにその学びが楽しくなるはずです。
もちろん例外もありますが、ここでは有名な如来さまの特徴・共通点を挙げておきます。
・一枚の衣をまとい、装飾品を付けない
仏像の元祖ともいえる存在は、悟りを開き、仏教を開いたお釈迦さまこと釈迦如来。
地位や財産を全て捨て、衣一枚を身に付けて出家したことから、如来様は衣だけという質素なお姿で、装飾品を付けないのが一般的だと言われています。ただし、密教の最高位であり、太陽を意味する大日の名を持つ大日如来は、その輝きで人々を救うことから装飾品を付けたお姿になっています。
・パンチパーマのような特徴的な髪形
如来さまは、パンチパーマのような髪型をしていますが、これは「螺髪」(らほつ)と呼ばれるものです。渦巻いた形の髪型になっていて、智恵に優れていることを表しています。釈迦如来の頭には、赤い「肉髻珠」(にっけいしゅ)と呼ばれる赤い球を付けていることも。これは、智恵の光明を表しています。
・眉間の真ん中にある白い毛の渦
これは、如来様だけの特徴ではありませんが、 眉間の真ん中に「白毫」(びゃくごう)と呼ばれる白い毛の渦があります。よく、「仏様の眉間にホクロがある」と言っている人がいますが、これは1本の毛なのです。ちなみに、その長さは、約4.5mなんだそうです。 白毫は、光明を表します。
・首にある三本のしわ
如来様の首には、3本のしわが刻まれています。これは、いろいろな考え方があるようですが、悟りに到達するための3つの段階を表しているともいわれています。
特徴は他にもありますが、如来様によって、また仏像によって違いもあります。
実際にお寺に足を運んで如来様に会い、様々なメッセージを受け取ってほしいです。
「印相」(いんぞう)からメッセージを受け取る
如来様に限ったことではありませんが、仏像となった仏様から実際にメッセージを受け取ることができます。
もちろん、仏像が喋ったりはしません!(笑)
しかし、仏様はしっかりと、救いを求める私たちにメッセージを送ってくれています。
それは、手です。
仏像の手元に注目すると、仏様がどのような手のポーズをしているかで、メッセージを表しています。
これを、「印相」(いんそう)、または「手印」(しゅいん)といいます。「印を結ぶ」とも、言いますね。
印相のことを語ればキリがありませんが、ここでは如来様が、どんな印相をしているのかをピックアップしていきます。
施無畏印(せむいいん)と与願印(よがんいん)
釈迦如来・ 毘盧遮那如来・薬師如来がしている印相です。右手は施無畏印といい、 手を胸の前に持ってきて、手のひらを外側に向けます。
左手は与願印といい、左膝の上に、手のひらを上に向けた形で置いています。
施無畏印は「畏れなくてもいいですよ」
与願印は「願いは叶いますよ」というメッセージが込められています。
薬師如来は、右手の薬指を少し曲げ、左手に「薬壺」(やっこ)を持っているのが一般的です。 薬壺 には、どんな病も治す薬が入っているといわれています。
阿弥陀定印(あみだじょういん)
阿弥陀如来だけの印相。手のひらを上に向けて、両手の人差し指を合わせて立てて、その指先に両親指を乗せる形で結んでいます。これは、阿弥陀如来が深い瞑想に入っていることを表しているそうです。
来迎印(らいごういん)
これも、阿弥陀如来だけの印相で、右手は上げて左手は下げ、両手の平を前に向け、それぞれの手の親指と人差し指(中指、薬指の場合もあり)で輪を作ります。極楽浄土から往生する人を迎えに来た時のメッセージです。
智拳印(ちけんいん)
智恵の深さを表す智拳印は、大日如来だけの印相です。 左手の美を人差し指を立て、その人差し指を右手で握る印相は、まるで忍者のポーズのよう。
同じ印相をしていても、少し指の動きが違ったり、手の位置に違いがあったり。
その個性を感じ取ることも、仏様と向き合う楽しみ方ではないでしょうか。
仏様と人間のコラボレーション?
今回は、如来様だけのことを書きましたが、まだまだ如来様のことだけでも、伝えきれないことばかりです。
調べれば、調べるほど、さまざまな仏像があり、それらを全て見ていくと、これまた簡単は解説できない!
もしかしたら、だからこそ今、仏像の個性に魅せられる人が増えているのかもしれない。
この記事を書きながら、改めてそう実感しました。
「あん・はな」は、仏像とは、仏様と人間のコラボレーションだと考えています。
昔から教えを説いてくれた先人たちが仏様となり、今も私たちを、その教えによって救ってくれています。
その学びがもっとわかりやすくなるために、人々は「仏像」という形で、仏様の教えを世に伝えることにしました。
そして、仏様のみならず、その教えを伝えたい、広めたいという人間の想いが加わって、様々なお姿や表情を持つ個性溢れる仏像として、現代を生きる私たちの目の前に現れてくれたのだと、「あん・はな」は信じています。
もっと、いろいろな仏様に会いたい!
生きているうちに、この世の仏様にあとどれだけ会えるのだろう。
また、新しい仏様のお姿に出会うため、お寺に足を運びたいと思います。