【あん・はな神様図鑑】疫病をも斬る!? 須佐之男命
- 2022/10/4
- あんはな文庫
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知っているようで知らない神様のはなし。
そんな神様のお話を、「あん・はな」流に紹介する【あん・はな神様図鑑】。
これまで、天照大御神・月読命を紹介してきましたが、三貴子 (みはしらのうずのみこ)を紹介したからには、やっぱりこの神様をご紹介しないわけにはいきません。
今回、【あん・はな神様図鑑】で取り上げるのは、
三貴子として生まれながらも、その乱暴な性格が災いして天界を追放されたという須佐之男命です。
「海の世界」を任された男神は涙した理由
妻神・伊邪那美を追いかけて黄泉の国へ行った伊邪那岐。
黄泉の国で穢れた体を清めるため、川に入った伊邪那岐は、たくさんの神様を誕生させます。
その中で最も尊い神様とされるのが三貴子。
左目を洗って生まれた、天照大御神。
右目を洗って生まれた、月読命。
鼻を洗って生まれた、須佐之男命。
伊邪那岐は、天照大御神に高天原を治めるように、月読命に夜の世界を治めるようにと伝えます。
そして、須佐之男命には、海のある世界を治めるように言いますが…須佐之男命は泣いてばかり。
その理由は、亡くなってしまった母神・伊邪那美に会いたいからでした。
伊邪那美がいる黄泉の国に行きたいと言いますが、黄泉の国でとんでもない目にあった伊邪那岐は大反対!
しかし、いつまでたっても泣き止まない様子に呆れ果て、「勝手にしろ」と隠居してしまいます。
須佐之男命は、黄泉に国に行くことを決意しますが、その前に高天原にいる姉神・天照大御神に挨拶をしようと考えます。そこで事件を起こしてしまい、天界を追放されてしまうのでした。
ピンチがチャンスに!八岐大蛇と対決!
高天原を追放された須佐之男命。
地上に降りた須佐之男命は、ここで大蛇に身を差し出すことになった美しい娘と、その両親に出会います。
ここからが、有名な「八岐大蛇」の物語です。
困っている親子を見て、その大蛇を退治するという須佐之男命。
暴れん坊として天界を追放された須佐之男命とは思えない判断力です。
よっぽど、娘が美しかったのか、両親によくしてもらったのか…。
どちらにしても、この判断が大きな転機となるのです。
須佐之男命は、八つの頭を持つ大蛇を退治するために、ある作戦を考えます。
それは、大きな瓶にお酒を入れて置いておき、大蛇がそのお酒を飲んでいる間に首を切ってしまうというもの。ここで、暴れん坊の本性発揮です。
結果、大蛇を退治した須佐之男命は、この時に助けた娘・櫛名田比売(クシナダヒメ)を妻にすることになります。
暴れん坊から愛妻家になった和歌の神様
三貴子の中でも、須佐之男命は人間らしく描かれている印象です。
そう感じる理由の一つが、三貴子の中で唯一、結婚をした妻神が登場するからかもしれません。
須佐之男命の妻神・櫛名田比売です。
八岐大蛇を退治した後、須佐之男命は出雲の国に須賀宮を建て、そこに櫛名田比売と一緒に住んだとされています。
その時に詠んだ歌が、
「八雲立つ 出雲八重垣 妻籠みに 八重垣つくる その八重垣を」
であり、これが日本最古の和歌であるとされていることから、須佐之男命は和歌の神様としても信仰されています。
神様でありながら、まるで人間のように暮らし、幸せな日々を手に入れた須佐之男命。
天界を追放されなければ、この幸せにはたどり着けなかったはずです。
須佐之男命が、今も人気の理由とは?
このエピソードの後も、記紀に登場する須佐之男命は、日本の神様を語るうえで外せない存在です。
今も、数多くの神社に祀られ、たくさんの人の信仰を集めています。
その人気の理由の一つに、疫病除けの神様として信仰されていること。
特に、近年のコロナ禍によって、さらに注目されたことは否めません。
しかし、その背景にあるのは、やはり八岐大蛇のエピソードが語り継がれてきたこと、
そこで見せる勇敢なヒーローとしての姿、さらにその後も妻と子を大切にする姿ではないでしょうか。
そして、
母に会いたいと泣いていたマザコンの一面も、
高天原で悪さをしてしまった一面も、
追放によってピンチに陥りながら、それをチャンスに変えて幸せを掴んだ一面も、
現代を一生懸命に生きている人たちにも見える「人間らしさ」に親近感を感じてしまうのかもしれません。
日本各地の神社では、須佐之男命が祀られているお社をたくさん見ることができます。
『古事記』では、建速須佐之男命、速須佐之男命、須佐之男命。
『日本書記』では、素戔男尊、素戔嗚尊など、このようなお名前で記されています。
ご利益も神社によって違うので、いろいろ探してみてくださいね!