仏様の教えを正しく導く「明王」の役割

「あん・はな」では、何度も紹介していますが、仏様には階級があります。

トップのグループを「如来」、その如来の仕事をサポートする「菩薩」

そして、今回ご紹介する「明王」と続きます。

明王は、密教から生まれた仏様です。

特徴は、何と言っても表情で、如来様や菩薩様が穏やかな表情をされているのとは反対に、怒っているような険しい表情をしています。

また、明王の「明」は、密教が説く仏様の智恵や真実が詰まった言葉(真言)を意味するもので、明王様は仏様の教えを説いても従わない人、仏様の教えに反する人を正しい道に導くことを役割としています。

では、どのような明王様がいらっしゃるのかを、見ていきましょう!

明王の中心的5名を集めた「五大明王」

最初は単体ではなく、
明王の中心的な役割を担う5名が集まった形の「五大明王」(ごだいみょうおう)をご紹介します。
五大明王は、五智如来の化身であるといわれています。

中央に大日如来の化身である不動明王、そして東西南北の四方に他の明王様たちが位置する形でいらっしゃいます。

●中央 不動明王(ふどうみょうおう)  大日如来の化身
●東  降三世明王(ごうざんぜみょうおう) 阿閦如来の化身
●南  軍荼利明王(ぐんだりみょうおう) 宝生如来の化身
●西  大威徳明王(だいいとくみょうおう) 阿弥陀如来の化身
●北  金剛夜叉明王(こんごうやしゃみょうおう) 不空成就如来の教令輪身)
※北は、烏枢沙摩明王(うすさまみょうおう)とされることもある。

これらの仏様は、密教とともに広まりました。

特に、中央の不動明王への信仰は厚く、今でも各地のお寺、もしくは自然の中に置かれている像など、様々な場所で不動明王様に会うことができます。

不動明王様は、「不動」というお名前のとおり、「動かないもの」を意味します。

明王の中でも、その威力は圧倒的であるとされ、いっさいの悪を焼き尽くしてしまうといいます。
そして、仏様の教えに従わない人たちを導いて救ってくださっているのです。

また、不動明王様の特徴として、「天地眼」(てんちがん)が挙げられます。

これは、片方の目が天を、片方の目が地を見ていて、世の中のすべてをくまなく見てくださっています。

怖い顔をしていても、実はとても慈悲深い仏様なのです。

愛と欲望を浄化させる「愛染明王」

次にご紹介するのは、「愛染明王」(あいぜんみょうおう)です。

こちらの明王様も人気が高く、お寺にお参りに行くと、会える機会も比較的多い仏様ではないかと思います。
不動明王様とセットで配置されているのをよく見かけますが、愛染明王への信仰も厚かったことを窺えます。

愛染明王様は、愛情や欲望を司るといわれています。

愛欲は、人の心を振り乱し、欲望の中で最も断ち切ることが難しいとされています。
時に自分の心をコントロールできなくなることもあり、「愛欲」という言葉は、あまりいいイメージで捉えられることがありません。

しかし、欲望は、時に生きていくうえで重要な活力にもなることも否定できません。
そこで、愛染明王様は、愛欲を浄化し、さらに愛欲をエネルギーに変えることで悟りの道へと向かわせてくれる、そんな凄い力を持った明王様なのです。

愛染明王様の特徴は、真っ赤なお姿をしていること。これは、愛を示している色だといわれています。

そして、6本の手を持ち、そのうちの2本には必ず弓と矢を持っています。
この弓は、「天弓」(てんきゅう)と呼ばれ、人々を正しい道に導くための道具なのだそうです。

穏やかな表情で安楽をもたらす「孔雀明王」

明王様は、みんな怒っている顔をしていると言いましたが、例外もあります。

それは、とても穏やかな表情が特徴の「孔雀明王」(くじゃくみょうおう)です。
明王様の怒った表情を「憤怒相」(ふんぬそう)といい、孔雀明王のようなおだやかな表情を「慈悲相」(じひそう)といいます。

その名のとおり、大きく羽を広げた孔雀の背の上の蓮華座に座っているのが特徴です。

孔雀は、毒蛇や毒虫を食べることから、インドでは毒を除く力があるとされてきました。
そのことから、孔雀は煩悩も食い尽くし、人々を守ってくれる動物であると信じられてきたのです。
そんな孔雀が神格化したのが、孔雀明王だといわれています。

孔雀明王様は、あらゆる害や病苦を取り除き、安楽をもたらしてくれる仏様として信仰されてきたのです。

4本の手を持ち、蓮華・孔雀の尾、そして2つの果実を持っています。

柑橘系の「俱縁果」(ぐえんか)と、別名ザクロと呼ばれる「吉祥果」(きちじょうか)です。

俱縁果は災いを防ぎ、吉祥果は災いを取り除くといわれています。

人間に寄り添ってくれる仏様たち

今回は、「明王」のグループにいらっしゃる仏様たちについて見ていきました。

本当は、五大明王様もお一人ずつ丁寧に見ていきたいのですが、それはまた別の機会にお届けできればと思っています。

「あん・はな」で、定期的にご紹介している仏様のはなし。
今回は、いつも怒った顔をしている明王様が、実はとても慈悲深く、間違った道を進もうとする私たちを正しい道に導いてくれたり、乱れた心を浄化して学びを与えてくれるような環境へと導いてくれたり、いろいろ救いの手を差し伸べてくれているのだということに気づかされました。

もっともっと、いろいろな明王様に会いにいきたいと思います。

皆様も、ぜひ!

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