神様とのご縁をつなぐ神使たち・水のいきもの編
- 2022/10/5
- あんはな文庫
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神使(しんし)とは、神道において神の使者として描かれている動物たちのことです。
現世の人に接触する役割を持ち、神様のお気持ちを代行する「神様の眷属」でもあります。
神使とされる動物の種類は、実はたくさんあります。
狐、兎、牛、猪、鹿など、神社やお寺でよく見かける有名な神使たちがいますが、
中には意外に知られていない神使もたくさんいるのです。
今回は、その中でもあまり知られていない、神使とされている動物たちの中でも、水の中で暮らす動物たちををご紹介します。どのように神使となったのか…
あなたは、彼らが神使であることを、知っていましたか?
竜宮城の使い!? 海の神様の側に仕える「鮫」
まず最初にご紹介するのは、鮫(サメ)です。
鮫が神使であるという印象はないかもしれません。
しかし、鮫は古来から日本人に関わりの深い動物でした。
例えば、神話の中でも鮫が登場します。
例えば『因幡の白兎』。
ここで兎をいじめる「ワニ」と記されている動物こそ、鮫だと言われています。
また、浦島太郎の原型にもなっているとされている『山幸彦・海幸彦』の話では、山幸彦を海の世界から地上へと送り届ける神使である鮫が出てきます。
実は、この鮫こそが、後に山幸彦の子を宿した海神の娘・豊玉毘売命だとわかるのですが、そこから鮫を豊玉毘売命の化身として考える人も多いです。
また、三重県伊勢市では、このような話が残っています。
日本三大御田植祭の一つに数えられる伊雑宮の御田植式の日。
神使である七匹の鮫「七本鮫」が、川を遡上し伊勢神宮・内宮の別宮「伊雑宮」に参詣するという話。そして、ある漁師が、その七本鮫のうち一本の鮫を間違って殺めてしまったという話から、今でも志摩の漁師や海女が海に出ない休漁日ができ、この日に伊雑宮へお参りすることを「五斎(ござい)」(もしくは御祭)と言います。
海にまつわる神々の伝説に、鮫は欠かせない存在なのです。
出世と縁結びの象徴!願いを乗せて泳ぐ「鯉」
同じ水の中で暮らす動物の中でも、川や池などに暮らす鯉(コイ)。
神社やお寺で、悠々と池で泳いでいる鯉の姿を見ることもありますが、
鯉は立身出世の象徴であり、さらに日本には「鯉のぼり」という習わしがあり、
鯉は昔から縁起のいいものであるとされてきました。
また、『日本書記』では、鯉が登場します。
景行天皇が美濃の地を訪れた時、とても美しい弟媛(オトヒメ)に一目ぼれをします。
そして、弟媛の気を引くために、池に鯉を放ったとされています。
この話から、鯉は縁結びのご利益があるといわれてきました。
鯉が神使だと伝わるのは栃木県。
大国主神と事代主神を御祭神とする「大前神社」があります。
その境内にある恵比寿様が持っているのは、鯛ではなく鯉です。
ここには、この神社の前を流れる五行川と、ある侍と鯉の伝説があるのです。
ある侍が、五行川で鯉を食べようとしました。
しかし、鯉から流れる血が「大前大権現」という文字に見え、恐ろしくなって神社で祈祷をしてもらうのです。そして、この出来事以降は、生きた鯉と一緒に神社を参拝し、お神酒を飲ませた鯉を五行川に放流すると願いが叶うという言い伝えが残ったそうです。
川を渡り、神様に願いを届けに行ってくれているのでしょうか。
生命力の強さが魅力!再生の象徴「蟹」
最後にご紹介するのは、水の中というよりも、水辺に生きる「蟹」です。
実は、蟹は再生・輪廻の象徴であり、水の神様の御使いでもあるとされています。
水の中も地上も行き来できる蟹は、神使としては適役なのかもしれませんね。
蟹は、鋭いハサミを持ち、そのハサミを使って仲間同士で争います。
争いの際にハサミだけでなく足を失ってしまう蟹もいます。
また、争いの際に自分が負けるとわかった時は、自らハサミを切り落とすことがあるそうです。
そんな蟹が再生の象徴とされるのは、蟹は脱皮した際に失ったハサミや足を再生させることができるからであり、その生命力の強さが縁起の象徴とされてきた理由なのかもしれません。
蟹は、神仏との縁が深い動物です。
例えば、金刀比羅宮では、蟹が神使であるとされてきたそうです。
また、愛知県常滑市にある「尾張多賀神社」では、蟹が神様の使いだとされています。
それは、神社の創建に関わった正元山伏が、近江国(現在の滋賀県)にある多賀大社のご祭神を勧請したのですが、その際に正元山伏の背中に乗っていたという由来があるそうです。
まだまだいる!神様に使える可愛い存在
今回紹介したのは、数ある神使の中でも、水の中で生きる動物たちでした。
神使として大事にされてきた動物は、まだまだ他にもいます。
今後も、「あん・はな」でいろいろご紹介できたらと思っています。
神社やお寺で、可愛い動物たち、神使たちに出会ったら、どんな由緒や縁起があるのかを調べてみてください。きっと、もっと神社やお寺が楽しくなるはずです!
どんな神使たちに出会えるか、それも参拝の楽しみの一つです。